その日、
東門 巧は、少し早めの昼食を取るため寝子島駅周辺に向かっていました。下宿先の大家さんが一泊二日の旅行に出かけたので、食べるものがなかったのです。
もちろん大家さんは、食事の準備をきっちりしていったのですが、うっかり炊飯器のスイッチを押し忘れてしまったのでした。
「何にしよっかなあ……」
ひきこもりだった頃は、出されたものを素直に――ピーマン以外――食べていたので、いざ自分で選ぶとなるとどうしたらいいか分かりません。
にゃあ、と足元に猫がすり寄ってきました。
「なんだよー? お前、お腹減ってるの? 僕、なんにも持ってないぞー?」
腹を見せる猫を撫でながら、巧はにんまり笑いました。――と、その背に声がかかります。
「ゴハン、買ってあげましょうか?」
は? と巧は振り返りました。そこには、少女が立っていました。白い肌に金色の髪、青い瞳。整った顔立ちとすらりと伸びた手足。控えめに言っても、目立つ美少女です。
「う、え!?」
巧は慌てて立ち上がりました。その拍子に猫が逃げてしまいました。
「あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!」
少女は一瞬ぽかんとしましたが、やがてクスクス笑うと、
「大丈夫。日本語分かります。……通じてますか?」
確かに日本語です。巧はこくこくと頷きました。
「よかった。あなた、ここの人ですか?」
もう一度、こくん。
「わたし、猫を見たくてこの島に来ました。案内してくれませんか?」
「ふぇっ!?」
変な声が洩れましたが、少女はそれを了承と受け取ったようです。巧の手を取り、にっこり笑って言いました。
「わたしはソフィといいます。あなたのお名前は?」
その頃、都内某大使館。
「姫が行方知れずだと!?」
「はい、それがその、侍女が今朝、部屋に伺ったところ……」
ベッドが、もぬけの殻だったというのです。王女はどうやら、夜明け前に抜け出したようでした。
「ええいっ、姫はどこへ行ったのだ!?」
「おそらく、寝子島ではないかと。侍女の話では、昨夜、寝子島のニュースをテレビでご覧になって、『モフモフしたい……』と」
「モフモフ?」
「つまり猫に触りたいと。寝子島は、猫が多いので」
「猫か……」
王女は無類の猫好きで知られています。しかし今回の旅では、飼い猫を連れてくることは出来ませんでした。
「既にSPが向かっております」
「早急に姫を連れ戻すのだ! だが、姫には毛ほどの傷もつけてはならんぞ!」
王女の名はソフィア。この国の第一王位継承者です。
「寝子島の休日」シナリオガイドをお届けします。
今回のシナリオは、ご存知某映画のようなお話です。
某国の王女・ソフィア(巧にはソフィと名乗っています)が寝子島の休日を満喫したいと願っています。
皆さんは、彼女に付き合って観光案内をしてあげてください。
猫に関係するスポットや猫が見られる場所だと、特に喜ばれるかも? もちろんそれ以外の場所でも全然OKです。
なお、漏れなく東門 巧がついてきます。
(ソフィとふたりきりで会いたいという方は、ソフィがちょっとはぐれたりした際に会えるかもしれません)
SPが追っていますので、彼らを撒く必要もあります。
ソフィア王女の写真は、新聞に小さく載っていますが、服装や髪形も違うので、気付かない人が多いでしょう。
皆さんは気付いていても、気付かなくてもどちらでも構いません。
また、観光案内ではなく、別の立場から彼女を追うことも可能です。