薄雲を象るようにして身を隠す月。
鎮まった夜の中、それを見上げながら
フィンレイ・ランカスターはゆっくりと道をゆく。
―― ……これが『噂』の……
歩きながら周囲に紅薔薇色の瞳をこらした。
そこには、星のまたたきよりも微かな、しかし確かに点滅する淡い光が舞っていた。
―― お盆もそろそろ過ぎるというここ数日中、
寝子島内では、とある噂話がまことしやかに広まっていた。
曰く、
日が沈むと蛍が島のあちらこちらで飛び回っていると。
川周辺のみならず、商店街や団地、寮や学校などなど場所問わずに。
少々不可思議ながらもただの蛍ということで、大抵の一般の人々はいっそ風情のある景色を喜び、そんな不思議蛍を拝みに夜に出歩く者も増えている。
しかしこの噂には、一部の耳に届く続きがあった。
その蛍たち、あまりにも蛍光が弱弱しいのだという。それこそすぐ目の前を点滅しているのに、今にも儚く消えてしまいそうな程に。
「なるほど、これは確かに……切ないものがありますね」
もれなく聞き知った情報を思い起こしながら、フィンレイは自身の周りへまるで縋るようにして舞い寄る蛍たちへ視線を注ぐ。
無意識に手が髪を結い留めている黒のリボンへ伸び、そして優しく触れた。
次にはその唇から、そっと歌が紡ぎ出された。
盆の時期でそういった言葉や会話を耳にする事が多かったからかもしれない。
フィンレイが鳴らせるそれは、まるで捧げるような、送り出すような、力なく光る小さな命たちへ寄り添う優しい音色。
―― Stay by my side……
ふと過ぎる。
『彼』と歩んだ道、景色、そして歌。
魂から奏でられる旋律に、鼓動が脈打つのを感じた。
―― 私が歌い続ける限り、生き続ける。
どうしたとて思い出せば痛みは伴うけれど。
しかし、もう悲愴に囚われることはない。
厳かな音色は生なる歌。
気付けば蛍たちの消え入りそうだった光が、徐々に輝きを取り戻していた。
それを目に留めれば、口元を微かに緩める。
「“貴方たち”が満たされるまで、歌いましょうか」
ではもう少し広い場所で、なんて歌いながら歩き出すフィンレイの後を、どこか嬉しそうに舞いながら蛍たちがついていった。
この度こちらを担当させていただけることになりました、
少しお久しぶりになります蒼色クレヨンでございます。
改めまして、フィンレイ・ランカスター様、ご当選おめでとうございます☆
リクエストシナリオという事で、初体験な身の上にて緊張でプルプルしておりますがっ
精一杯努めさせていただきますので、何卒宜しくお願い致します!
もちろん、全てのご参加者様に楽しんでもらえるよう全力投球の構えで
素振りしながら、キャラ様方との出会いをお待ちしております☆
●不可思議現象発生中
もう時期は過ぎた気がする?と首を傾げるほど、島の至る所で蛍の目撃情報あり。
あまりに小さく弱い蛍光のようで、見えるのは大抵月が隠れた暗闇が濃い夜の様子。
●[ホタルのようなもの]について
実はよぉく観察していると、「蛍」の姿形は見受けられず、蛍光のみが飛んでいるふう。
なので、好奇心旺盛な子供が捕まえようとしたら網や手をすり抜けた、という情報も。
このホタルたち、神魂の力で“なにか”を求めるように寝子島内を飛び迷っている。
“なにか”=誰かを想う心が籠ったモノ
噂話の中に、以下のような証言があるよう。
・「遠恋な恋人が恋しくなって、夜の海で想いを叫んでいたら急に蛍たちが寄ってきました。
すごく元気にまたたいていて、慰められちゃった」
・「一人暮らしを始めたばかりでホームシックになって……
田舎のおかーちゃんへ今まで言ったことないような、感謝の言葉を手紙にしたためていたら
ふと真横の窓の外を見ると蛍が何匹も飛んでてさ。
手紙覗かれたみたいでちょっと恥ずかしかったよ」
・「公園の灯りをスポットライトに見立てて劇の練習してたら、熱が入っちゃって。
だって親友同士で決闘するんだよ? 相手はどんな気持ちなんだろう、って考えてたら
なんか涙が出て来ちゃってね。そしたら目の前に、観客!?ってほど蛍が沢山!
びっくりして涙引っ込んじゃったー」
●出来る事
◇噂話たちから、ホタルの求めているものを何となく把握。
想い人への恋心を夜空と蛍へ聞かせたり、
ホタルたちを想って歌を贈ったり、
役に入り込んで演劇風に捧げたり etc☆
◇噂を知らず、純粋に蛍だと思い込んで行動。
蛍目撃とだけ耳にして、蛍を探し回って中々見つからなかったり、
たまたま夜のお散歩帰りに蛍に遭遇して、静かに鑑賞したり、
誰かが蛍へ想いを送っている所へ出くわして、
段々力強くなる光たちをうっとり眺めたり etc☆
この他、キャラ様の個性に合わせた思いつくままの行動をされても勿論OK♪
しっとりめな雰囲気を予想しておりますが、コメディ方向に転がすアクションも当然可。
キャラ様らしく蛍狩り(仮)を楽しんでいただければ幸いです。
当方の、令和☆初シナリオ!
こんな文房具ですが、令和でも何卒よろしくしていただければ幸いです。
たくさんのご縁に恵まれますように☆
蒼色クレヨンでした♪