「わあっ、夜の寝子島も素敵ですね♪」
それは
リリエル・エーテライトが、夜の散歩を楽しんでいる最中に起きたできごとであった。
気持ちよい夜風を浴びていたら、不意に男のダミ声が耳に飛び込んできた。
「た、助けてくれーい! おお、そこのお嬢ちゃん、ちょっと助けてくれんかねー!」
一見して、どこかの寺の住職だろうか。つるりとした頭の男が慌てた様子で駆けてきて、リリエルにすがる。
「おおっ、あんたひょっとしてもれいび……いや、ほしびとっちゅうやつかね? ちょうどいい、助けてくれんかね!」
「ど、どうしたんですか? 何かあったんですか?」
島の情報にはひと通り精通しているらしい男は、やはり九夜山の中腹あたりに建つとある小さな寺の住職であるらしい。
やけに周りを気にしながら、男は早口に語った。
「うちの寺が保管しておった、いわくつきの物らが逃げ出してしまったんじゃ!」
「物? 逃げ出した?」
「そうじゃ。どれも恐ろしい呪われた代物でな、いずれお祓いをするつもりだったんじゃが……」
一般人ならば眉をひそめるところだが、ほしびとであるリリエルは興味を惹かれたのか、男に尋ねる。
「それって、どんな物なんですか? そんなに慌てているんですから、よほど危ないものとか?」
「うむ、そうじゃな。なんと説明したらよいか……おお! ちょうどあんな感じじゃな」
「あんな感じ?」
住職が指を差したほうを見てみると、そこにはなにやら、小さなものが佇んでいる。
それは大きさ50cmほどの、古びた黒猫のぬいぐるみだった。あちこちがほつれてボロボロで、目玉代わりのボタンは片方が無くなり、片方が取れかかっている。腹の綿は半分ほどが飛び出しており、手には赤いものがついた包丁を持っていた。
住職は指を指したまま青ざめて、すっかり固まっている。
黒猫のぬいぐるみはぐりっと首を動かしてリリエルのほうを見ると、ひた。ひたひた。ひたひたひたひた。こちらへ向かって歩き始めた。
「こ、こっちに来ますよ!? どうしたらいいんですか!?」
「こっこここここのお札を張ればいいんじゃ、そうすればあやつらは動けなくなるでな! 頼んだぞお嬢ちゃん!」
「ええーっ!?」
言われるがままにお札を持たされ、リリエルはぬいぐるみと対峙する。今やぬいぐるみは走り出していて、それもかなりのスピードだ。逃げても追いつかれてしまうだろう。
「も、もうやるしかありません……! がんばリリエルーっ!!」
リリエルの青い瞳に、包丁のぎらつきがやけにまぶしく映った。
こんにちは、昂祈です。
まずは、リリエル・エーテライトさん、ガイドに登場して頂きましてありがとうございます。
今回は普段と少し方向性の違うシナリオとなります。
傾向としては少々のオカルト要素ありな妖怪退治的なものになるでしょうか。
それぞれの特徴は下の方に記載していますので、それを参考にしつつ作戦や戦術などを考えてみてください。
上手くハマれば優位に立つことが出来るかと思われます。
それではどうぞよろしくお願いします!
状況
とある寺に封じられていた呪いの品々がひとりでに動き出し、街へ飛び出してしまいました。
保管されていた物品は、三つ。
いずれも強力な呪いや怨念が宿っているといういわくつきのアイテムで、
以前から夜になると勝手に動き出すらしい、という噂があったそうです。
対処するには、寺の住職が作ったお札を張り付け、動きを封じる必要があります。
皆さんは、
・たまたまこれらの物品と出くわした
・あちこち駆け回っている住職に助けを求められた
・気がついたらいつの間にか巻き込まれていた
など、どのようなきっかけで参加しても構いません。
それぞれの品物の由来にまつわる方法を模索すると、うまく解決できるかもしれません。
何とかしなければ、今夜に繰り広げられるのは、実に恐ろしい惨劇となることでしょう……。
気を引き締めて臨んでください。
呪いの品々
三つの品物のうち、どれに対処するかを決めて、アクションにお書きください。
なお品物たちは、殴る蹴るなどの攻撃でダメージを与えることもできますが、時間が経つと再生してしまいます。
動きを止めるためのお札は、一人につき一枚与えられます。
(知らずに巻き込まれた人も、いつの間にか一枚持っています)
破られたり汚されたりしてしまうと、効果を発揮することはできませんので、慎重に使ってください。
○子猫のぷーにゃん
とある陰惨な殺人事件の現場に残されていたという、被害者の少女の遺品。
俊敏に動き回り、手に持った包丁で、主に若い男性を狙って斬りつける。
シーサイドタウンを中心に広範囲を徘徊中。
○トヨニャ・NK2
とあるレースでゴール直前に事故死した走り屋の愛車だったという車。
廃車寸前のぼろぼろだったはずが、往年の姿を取り戻している。
事故の原因はライトだったと言われている。
九夜山の山道近辺を爆走中。
○当世具足・無銘
戦国時代の武将が身に着けていたという甲冑。あまり著名な武将のものではないらしい。
武器として刀、槍、弓矢、鉄砲がセットになっている。
星ヶ丘教会の敷地で強者を待っていて、果たし合いを挑んでくる。
名誉を上げる事に躍起になっている為、果し合いの事しか考えていない。
備考
・武器などの類は、普段の生活で持ち歩いているようなもののみ持ち込めます。
あまり大げさなものや大量の物品は持ち込めません。
・ほしびとのPCは、人が見ていない時に限り、星幽塔の格好で登場することができます。
それでは、ご参加をお待ちしています!