想いを形に
それは誰が為に ――
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「……う、ん……難しいな」
月夜の淡い光を受け止めた葉たちが窓辺から静かに、見守るようにして揺れるのを目にすると、
五十士 柊斗は浅く息をつく。
季節も大分移り変わりを見せ、増えてきた緑色を視界に捉えると自然と彼女の瞳が重なって。
いつも真っ直ぐに想いをくれる大切な人へ、中々もらった分を返すことが出来ないのがもどかしい。
自分の心が、会う度に彼女へと傾いていくのは自覚しているのに。
先日は、どうにか一歩を踏み出せたつもりではいるものの、まだ、もっと、今の自分が彼女へとしてあげられることは無いのだろうか……。
ついぞそんなふうに思っていたところへ、ふと日中足を向けた先の文具店で見つけた、シンプルなレターセット。
手紙の隅に水色の天使の羽が、うっすらと浮き出ているのを見て、似合いそうだな……といつの間にか手にしていた。
―― 本人に贈れるかは分からないけれど……。
今の自分の素直な心を字にしてみたら、何かが分かるような、変われるようなそんな気がして柊斗は思いつくまま机に向かって、鉛筆を走らせていた。
「これじゃ俺の想いというより……」
暫しの時間後、視線を紙に落とせばしたためられた言葉たちは、彼女の容姿についてだったり日頃の感謝についてだったり。
いや、これはこれで自分の正直な気持ちなのか? いやいやいや。
羽の模様の紙ではなく、下書きというか試し書きのつもりで文字を刻んだのは、大学で使っているレポート用紙だったため、遠慮なくクシャッ。
……贈れる物に仕上がるだろうか……。
切なげなアメジストの瞳を月へとやれば、ぽつり、想い人へ向けるように何かが囁かれた。
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「次はいつ会えるでしょうか……って、ああ、また書いてしまっています……」
自分へと呆れるように、目の前で開かれたスズラン柄のページを消し消し。
エリューシア・セリアンは溢れる想いを、気付けば取りとめなくしたためていた。宿題をしようと開いたはずのノートの片隅に。
これで何度目だろう。いけない……。どうしても、欲張りになってしまっている。
初めて、彼が想いに応えてくれた気がして。
少なくとも、まだそばにいていいのだという許しをもらえた気がして。
「もっと、なんて、贅沢ですよね」
またそのうち、二人で出かけられるのだから、今はこみ上げる愛しさを抑える時なのだと自分に言い聞かせる。
綺麗に消したページの上に、自らの気を逸らせるように改めて数列の文字たちを並べていった。
お世話になっております! 蒼色クレヨンでございます☆彡
五十士 柊斗様、エリューシア・セリアン様、ガイドへの登場に拝借させて頂きありがとうございます。
もしも本シナリオにご参加いただける場合、ガイド本文などさくっとスルーしてお好きにアクションを練って下さいませ。
■手紙をしたためてみる■
↑こんな主旨となります。
心の中の声でなく、自分の手で綴った、目に見える具体的な文字の形となれば、
どのような方法をとって頂いても構いません。
書いた物を誰かに渡すのを始め、渡さず自分のみで完結(自分へ宛てた日記やポエム等)してもOK。
・海辺で砂の上に、憧れのあの人への気持ちを小枝で綴ってみたり
・吐息で白くした窓に、今は遠くにいる家族へ言いたいことを形にしたものの、きゅぅぅっ……と消してしまったり
・日頃言えないことを手紙で交換してみようぜ! と友達同士で交換日記のようなことをしてみたり
手紙(文字を書いているとする)部分を、『』や【】なりで括って分かるようにアクションにお書き頂けると大変助かります。
(台詞や心の声と区別する為)
コメディでもシリアスでもラブロマンスでも、どうぞキャラ様らしく筆をとってみてもらえればと思います。
どんなお手紙が垣間見れるのか、こっそりこっそり楽しみに待ちわびております。
それでは、リアクションでお会いできます様に…… 蒼色クレヨンでした☆