それはある日の事でした。
偶然か必然か、夜の寝子島高校にあなたは迷い込んでしまいました。
迷い込んだ理由は既に忘却の彼方で、ただあなたはそこに佇むばかりです。
いえ、学校にいるのだから帰ればいいだけの話で、なら早く帰宅しようとあなたは時間を確かめる為時計を見遣ります。
時計の針が深夜を指し示し刻々と時間を刻む中、あなたは近づいてくる足音に気づきました。
「人形を知らない?」
振り返ると同時に細い声で問われました。
質問主は少女でした。
首の無い人形を胸に抱きしめて少女は口を開きます。
「人形を知らない?」
静かな声で同じ質問を繰り返します。
チカチカと明滅する蛍光灯の下で少女はあなたを見つめています。
少女は、探していると訴えます。見つからないと嘆きます。
人形を腕に抱きながら、人形が無いと泣いています。
「でも」
少女は泣くことをやめて、明るく笑いました。
「見つけた」
明滅する光と闇に混ざり、あなたは無数の人々に囲まれているのを知ります。
制服からして寝子島高校の生徒であるのはわかるのですが個人を特定する首から上が無く、それに驚き退いたあなたの影を首なし生徒の一人が踏み締めます。
すると、動くことも出来ない激痛に襲われ、あなたはその場に蹲りました。
それでも伸びてきた手から逃れようと抵抗を試みて、幸いにも逃げ出すことに成功したあなたは、しかし、もう一度影を踏まれたら二度と立ち上がれないだろうことを察します。
今は、ただ逃げるばかりです。
捕まれば、命ではなく首を差し出すことになるのは明白だったのですから。
黒塗りの空に貼り付けられた紙のような月は凍えらんばかりに蒼白で。
足音は暗闇の中、耳に残らんばかりに響き、あなたを歓迎するかのように押し寄せてきます。
無数の生徒に追いかけられるあなたは、平穏な日常に戻ってこられることを、まだ知りませんでした。
はじめましてまたはこんんちは保坂紫子と申します。どうぞ宜しくお願い致します。
当シナリオは文章から察して頂けるように夢オチ確定の安心ホラーとなっております。
何故か学校に迷い込んだという理由だけで、特に何故そこにいるのかという前提は必要ありませんので参加に条件はありません。ただフレイバーとして必要であればそれも歓迎しております。
夜の寝子島高校は、
窓も玄関も施錠されています。
硝子は何故か割れません。
電気は付いてますが、蛍光灯という蛍光灯は寿命が近いのか明滅してます。
しかし、あなたの影はくっきりはっきり床に浮かび上がっています。
あなたを捕まえようとする首なし生徒は思ったよりは俊敏です。彼らに影を踏まれたら痛みで一人では歩くこともできなくなります。ただ動けなくなった人を影を踏まれてない人が引きずることは可能です。
少女が抱いている人形は着ている洋服からして古いもののようです。また煤けてたり傷んでいたりと状態は良いものとは言えませんが、大事にされてもいるようです。
夜の学校を勇気を振り絞って進むのも良し、聞こえる足音に怯えやり過ごそうとするのも良しの夢落ち確定安心システムのホラーです。