若手実業家を自称する
竜宮 夏姫の元に、ふたりの女性が現れたのは、ある雪の日の午後だった。
「靴下から船舶まで、ご要望とあらば何でも仕入れる……ってのはあなた?」
「そうだけど……あっ! もしかして、もしかしなくてもお客さん?」
イエス、という微笑みとともに、差し出しされた名刺。
「アール・アンド・アール・エージェンシー?」
聞いたことのない社名だった。
年上の美人の方は
リンコ・ヘミングウェイ、お団子頭の少女の方は
坂内 梨香というらしい。
「立ち上げたばかりでね。なにかと物入りなの」
「そういうことなら何でも言って。なにが入用?」
「そうね、人と機材を運べるバンを一台。それとポラロイドカメラとサーモグラフィカメラ、解析用のPCも欲しいわね。それから……」
梨香がこまごましたものを挙げてゆく。
夏姫はそれらを全て書きとめたのち一瞥し、この上客らに笑顔を向けた。
「オーケー、揃うと思う。支払いは?」
「キャッシュで」
夏姫は思わず目を瞠った。すべて合わせるとそれなりの金額である。
それをキャッシュでとは、これはいい商売になりそうだ。
「これで充分? 他にも必要なものがあれば揃えるわよ」
「ありがたいわね。実は、一番に頼みたいことはほかにあるの」
「なに? 言ってみて」
するとリンコは夏姫の耳元に口唇を寄せて、こういった。
「人材。それもただの人じゃない。……フツウじゃない出来事や事件に首を突っ込むような度量と好奇心と能力を兼ね備えた、寝子島の人材が欲しいのよ」
「なんのために?」
「私たちの会社、そういう会社なの。R&R Agency。できたてほやほやの、フツウじゃないことに首を突っ込む会社。たとえば伝承や伝説を追いかけたり、オカルト的な事件を調査したり解決したり、ね」
「オカルト的な事件、というと?」
「最初の仕事は、そう……幽霊屋敷探索よ」
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
「オカルト事件調査会社R&R Agency」を軸にした、新シリーズを起動させました。
基本的には読み切り事件・冒険モノとしてやっていく予定で、
過去のシリーズなどを読む必要はありません。
ちょっと不思議な事件などに首を突っ込んでみたいPCさん、募集します!
竜宮 夏姫さんガイド登場ありがとうございます!
ご参加いただけなかった場合でもちょっと儲けたと思います。
R&R Agencyについて
R&R Agencyは、<鈴島海賊の秘宝>シリーズ最後で謎の組織シーノを抜けた
リンコ・ヘミングウェイと坂内 梨香が立ち上げた会社です。
事業内容は、オカルト事件の調査や解決。
依頼人の依頼に応じて、世界中どこにでもエージェントを派遣します。
フツウじゃないことに慣れた寝子島の人々こそ、こういう仕事に向いている、と
寝子島はシーサイドタウンの雑居ビルの一室に事務所を置くことにしました。
みなさんは、スカウトされたり噂を聞きつけたりして、基本的にはR&R Agencyと契約し、
R&R Agency社のエージェントとして事件や調査に取り組みます。
能力さえあれば、性別・年齢・種族は不問。
契約は1事件ごと。
報酬は前金+成功報酬で、成功すればそれなりの金額が貰えます。
必要経費は会社持ち。
エージェントになると今後は仕事の連絡が行ったり、事務所で仕事をみつけたりできます。
※以前のシナリオで関わりのあった方はリンコから直接連絡があったことにしてくださって構いません。
以前関わりのあったPCや夏姫さんから聞いた、ということでもOKです。
また、夏姫さんのように自分の仕事を持っている方などは、
エージェント契約をせず、協力者としてシナリオに参加することもできます。
今回の依頼
依頼ファイル名:春の肖像
依頼人: 深見 春子(ふかみ はるこ)
余命いくばくもない老婦人。箱根の保養所で最期の時間を過ごしている。
依頼内容:
K県N村にある依頼人所有の別荘から、「春の肖像」という絵を探して持ってきてほしい。
「春の肖像」は、画家であった父・深見 遥幻(ふかみ ようげん)が描いた春子の肖像画らしい。
絵の大きさは絵葉書ほどと小さいものだが、
近ごろ海外で遥幻の絵の評価が高まっており、
幻と言われていた「春の肖像」が見つかれば高値で取引されることは間違いないという。
絵を最後に見たのは10代の頃。父がアトリエに使っていた別荘「遥幻庵」だと春子はいう。
問題はその別荘が現在は、村内でも有名な幽霊屋敷になっていること。
春子自身も過去に何度か別荘を訪れたのだが、あまりの怖さに中に入ることができなかったそうだ。
<補足情報>
深見 遥幻:
日本画の技法を取り入れた油絵で名を成した画家。
大正後期から昭和初期にかけて精力的に活動するも、戦後、肺を病み42歳(春子18歳)で死去。
春子は遥幻の一人娘。春子の母は、春子が物心つく前に死んだらしい。
遥幻庵:
森の中にぽつりと佇む、築80年ほどの二階建ての洋風の屋敷。
遥幻の死後、春子が相続したが、住むことはなく、ほとんど放置されてきた。
一階に台所、居間、アトリエ、二階に寝室、子ども部屋がある。
長らく人の手が入らなかったので、窓は破れ、屋内は荒れ果てている。
遥幻庵の幽霊目撃情報:
・日の翳った午後にアトリエの窓辺に立つ男がいた
・夜中に遊び半分で忍び込んだ若者が居間で和装の女を見た
など多数。
大まかに分けると昼間アトリエに出る男の幽霊と、夜に出る女の幽霊の2パターンに分けられる。
<その他の情報>
春子は自らの死期を悟り、遥幻庵を処分するつもりでいる。
そのため現在は、ワケアリ物件専門の不動産屋・宮辻不動産に館の管理を一任している。
宮辻不動産は、幽霊情報の真相を確かめるべく、夜を待って降霊会を行うという。
そこにR&R Agencyも立ち会うことになっている。
アクションについて
1.立場を書いてください
R&Rのエージェントとして/○○屋の店主として など
2.次の選択肢から行動を一つ選んで冒頭に書き、続けて自由にアクションを書いてください。
【1】幽霊屋敷「遥幻庵」に行って現場を調査する/降霊会に参加する
【2】箱根の保養所に、深見 春子を訪ねる
【3】リンコとともに寝子島の事務所に残り、他のメンバーをサポートする
冬休みのある日、午後~夜にかけてが舞台です。
持ち物は、そのキャラクターが手に入りそうなものであればとくに制限しません。
エージェントになる方は、多少高価なもの(車など)でも、R&R Agency社で準備できる場合もあります。
登場NPC
坂内 梨香:R&R Agencyの実質ボス。遥幻庵に赴いて事件解決や調査に当たる。
リンコ・ヘミングウェイ:R&R Agencyの表向きの社長。裏方が得意で、あまり現場には出ない。
深見 春子:依頼主の老女。箱根の保養所にいる。
弱っていてベッドを出ることはできないが、話すことはできる。
宮辻 新也(みやつじ しんや):ワケアリ物件専門の不動産屋社長。
30代。長身でスーツが似合うが、笑い方がいけ好かない感じの男。
この手の話に慣れているよう。降霊会を企画。
雪村 鞠(ゆきむら まり):宮辻が連れてきた霊媒師の少女。16歳。
霊の言葉を口寄せできるというが、もれいびより能力としては弱く、不安定。
古風な雰囲気の三つ編みの少女で、疲れやすく倒れやすいよう。
学校にも行っていないようで、普通の学生たちがいると羨ましそうな顔をすることも。
それではご参加お待ちしております!