本格的な冬に入って、凍えそうなほど寒い夜が続いてます。
床に落とした針の音さえ響きそうな、しんと静まりかえったなか、旧市街にある雑貨店『memoria』の2階で新商品のデザインを考えていた
中山 喬は、ふと密架に名前を呼ばれた気がして顔を上げました。
「密架?」
階下へ下りて行った喬は裏庭で彼女の姿を見つけます。
白い息を吐き出しながら、密架は空を仰いでいました。
そこに浮かぶ、まろやかな乳白の月を。
「呼んだか?」
またあんな薄着で、と眉をしかめる喬を振り返り、密架はにっこりと笑いかけます。
「お月見をしましょう」
「はあっ!?」
我が耳を疑う思いで、思わず喬は身を乗り出していました。
「時期考えろ時期! こんなクッソ寒いなか、だれが月見なんか――」
「ほら、すごく月がきれいでしょう? あしたは満月だし、きっともっときれいだわ。
だから、みんなで一緒に見て、楽しくお話したいと思ったの。
私はお茶とお菓子を用意するから、あなたはポスターを作ってちょうだい。あと、学校のお友達も誘ってね」
喬は開いた口がふさがらない状態でしたが、にこにこ笑って楽しそうに話す密架の姿にゆっくりとその口を閉じるとガリガリッと頭を掻き、ため息をつきました。
「……分かった。
で? 日時と場所のほかに書いとくことは? 何かあんのか?」
「そうね……」
密架は少し考えて、こう言いました。
「きっとあしたも晴れるから。一緒にお月さまを見ましょう」
こんにちは。またははじめまして。寺岡志乃といいます。
今回のシナリオは、雑貨店『memoria』の裏庭で、月を見ながらお茶会をしましょう、というものになります。
裏庭は低い垣根に囲まれよく手入れされた芝生で、4人掛けの丸いゴシック調アイアンテーブルとチェアーが揃っています。
お茶とコーヒー、お菓子は用意されていますが、早めに来て密架と一緒につくったり、喬の準備を手伝ってくれるのも歓迎します。
よければお友達もお誘いして、ぜひお越しください。
きれいな月と夜空を見ながら楽しいお茶会をしましょう。
【NPC紹介】
密架(ひそか)
下の名前です。苗字は不明。20代後半~30代前半。
雑貨店『memoria』の店主で、黒のタートルに生成りのロングスカート、黒のストールを肩にかけているという黒づくしな姿と落ち着いたふるまいから、未亡人ではないかという噂がたっています。
クッキーを焼いたりパイをつくったり、お茶を入れたりとホストをします。
中山 喬(なかやま たかし)
17歳。寝子島高校2年生。
口は悪く、所作は乱暴ですが、手先が器用で細かい仕事をいろいろとこなします。
今回は裏庭で月見の用意をひととおりしたあとは、2階へ戻ってデザインを練ったり試作品の製作をするつもりです。
それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。