○
師走のある夜のことだ。
――九夜山の麓、甘味処『向日葵』。
「よいしょ、っと」
ガラガラと音を立て、『向日葵』店主の
美々津 日向はシャッターを降ろす。
何の気はなしに振り向けば、冷たい月影が、店先に広がるひまわり畑を照らしていた。
もっとも、今そこに見るべき花は一つもない。
ひまわりの咲く盛りは、もうとうに過ぎているのだから。
ただ枯れたひまわりだけが並ぶ光景に、日向は若干の寂しさを覚えた。
帰る間際に、ほんの少し畑を眺めようと。
そう思って畑に近づいた彼女の首筋を、ぞくりと震えが一筋撫でる。
特別冷たい風が吹いたわけでもない、後ろを振り返ってみても何があるわけでもない。
訝しみながら、日向は畑に再び目を向け――そして、こぼれんばかりに見開いた。
枯れたはずのひまわり達が、狂ったように月下に花を咲かせていた。
単なる狂い咲きとは明らかに違う、一目でそうとわかる『フツウではない』目の前の光景。
俄には信じがたいそれに、日向は両目をこする。
来年もきっと綺麗な花を咲かせてくれるはず――そんな思いと疲れが見せた幻覚だろうと、そう思っていた。
だが、
「え――」
目を開けた彼女の視界に映ったのは。
自分に向かって伸びてくる、無数のひまわりの枝葉だった。
○
――翌日。
『向日葵』を訪れたお客たちは、案内の張り紙一つなく店が閉まっていることを訝しんだ。
昨日、日向は明日を店を休むようなことは言っていなかったし、何か急用が出来たのならば、店の手伝いをしてくれる人たちに連絡の一つも行くはずだ。
それも全くないとなれば、急病かそれともはたまた事故か。
店先であれこれ話し合う人々の足下に。
ぞっとする程鮮やかな黄色い花弁が何枚も、ひらりと風に運ばれ落ちた。
道の向こうへと視線を向けた時、集まっていた人々は揃って一つの幻影を見た。
月下に咲き誇る、満開のひまわり畑の姿を。
どうも皆様お久しぶりです、風雅です。
今回は前シナリオに引き続いて『向日葵』絡み。
今度は冬の和菓子に舌鼓……ではなく、ひまわりによって捕らわれた日向を助ける純戦闘シナリオでございます。
幽霊出たりろくなもんじゃねえなこのひまわり畑!
【概要】
・ひまわり畑に囚われた日向を救い出し、この異変を解決するのがシナリオの目的となります。
・皆さんはひまわり畑の異変(幻影)が日向の失踪と関連があると気づいていてもかまいませんし、気づかないところからスタートしてもかまいません。
・夜のひまわり畑での戦闘、および日向の救出がシナリオのメインとなります。それ以外の場所、時間、および関係のないアクションは描写が極端に少なくなるか、もしくは省略されます。
【ひまわり畑について】
・咲いているひまわりは全て、神魂の力によって突如狂い咲いたものです。つまりひまわり畑は全て敵のテリトリーとお考えください。
・しかも植物のソレを大きく逸脱した凶暴な自我を有しており、近くに居る者には見境なく襲いかかってきます。食虫植物みたいに誘い込んだりはしません。自分から来ます。
・神魂の力のせいか、枝葉は自由自在に動くうえに伸縮可能。他にも種をショットガンみたく発射してきたりします。
・満開のひまわり畑が出現するのは、夜の間のみ。つまり戦闘は必ず夜からになります。それ以前にひまわり畑にあれこれ仕掛けても、夜になり"満開のひまわり畑"が出現した瞬間全て上書きされて無駄になります。
・ひまわり畑の奥に、この異変の中核となっているひときわ大きなひまわりが咲いています。そいつがいいわばボスです。
・切ったり燃やしたりしても、事が済めば元通りです。ご安心を。
【日向について】
・日向はボスひまわりに囚われており、意識を失っています。
・囚われただけで危害は加えられていません。が、ひまわりの盾にされる可能性はあります。
・ボスひまわりを倒せば彼女も解放されます。
……と、そんな感じのバトルシナリオです。
どうぞ、ご参加お待ちしております。