シナリオ「オーブラジャー！ 久保田美和、人生最大のピンチ」

オーブラジャー！　久保田美和、人生最大のピンチ

　寝子高１年の野菜原ユウは、寝子島駅の前にあるベンチに腰掛けてぼーっとしていた。
　担任の美和ちゃん先生ってけっこー可愛いのにモテないんだけど、なんでだろう？
　久保田美和……姓名判断してみると酷かったり？
　なんて考えながら。
　と、ベンチに布でできた何かが置いてあることに気がついた。
（なんだこれ？）
　手に取ってみると、それはブラジャーであった。
　うわ、大きい。何カップ？
　と思ったその瞬間――
　ビビビッと感電したかのような衝撃が走る。
　目を開けると、そこはいつもの寝子島駅のように見えるが……

　ユウの目の前を、ラジカセを肩にかついだケミカルウォッシュの男が通っていく。
　すぐ近くでは、３０年前に大流行したビックリニャンチョコのシールを見せ合う子どもたちがいる。
　車はどれも古くてカクカクしている。
　駅で待ち合わせている人たちが妙に多い。

　どうしたんだろう？
　昔を懐かしがる遊びでも流行ってるのかな、と思ったそのとき、
　パチーン！
　目の前で若い男が若い女に思いきり平手打ちをされた。
　その衝撃でユウの足下に男の定期券が落ちる。
　好奇心でチラッと盗み見ると、「久保田一美」と書いてある。
　男なのに「一美」は珍しいなとか、ちょうど久保田先生のことを考えていたので同じ苗字だなとか思ったユウは、女の顔ものぞいてみる。
（うわ、美和ちゃん先生にそっくりだわ～。やっぱり美人かもねー）
　ユウは、久保田一美という男と、美和ちゃん先生にそっくりの女のケンカをこっそり聞くことにした。

　よくよく聞いてみると……
　２人は、友だち以上恋人未満のようだ。
　ポケベルがどうとか、待ち合わせに遅刻だとか、女心がわかってないとか、とにかく男の久保田一美が悪いらしい。
（ポケベルってなんだろう。なんだっけ……？）
　そして、２人の仲がいよいよ壊れそうなそのとき、一美は汗を拭こうとしてカバンからハンカチを出したが、それはハンカチでなく……ブラジャーだった。
「どこの女の持ち歩いてるのよ！」
　パチーン！
　そして女は去って行った。
「え？　なにこれ？　どうしてこんなところに？」
　一美はブラジャーを手に呆然としている。
（もしかして……）
　ユウは、思わず青ざめた。
　そのブラジャーは、自分がさっき触ったあのブラジャーと同じ。
　そういえば、感電した瞬間に放り投げたブラジャーがどこにいったのかわからない。
　もしかして……カバンに入ってしまったのか？
　もしかして……２人を別れさせてしまったのは、俺のせい？

　一美はおろおろと嘆きながら、新聞を広げた。
「今日の星占い、絶対いけるって書いてあったのにー！」
　叩きつけられた新聞を見て、ユウは愕然。３０年前の日付が書いてある。
（まさか、３０年前の過去にきてしまった？）
　ケータイを見ると、３０年前の日にちになっている。電波はきてない。
（うわあ、３０年前にきちゃった。３０年前のよく知らない久保田ってやつの恋愛に迷惑かけちゃった！　どうしよう～！）
「く、くぼたさん……ゴメン」
　気が動転してる一美は、見知らぬユウに泣きついて、こう言うのだった。
「子どもの名前も決めてたんだよ……俺の一美の『美』と和代の『和』をとって『美和』だよ。久保田美和。なあ、いい名前だろう？　そう思うだろう？」

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

梅村象山

マスターコメント

こんにちは。マスターの梅村です。

たぶん３０年前の寝子島に来てしまいました。
（落ちてたブラジャーを触って過去に来た人が多いようですが、そうでない人もいます）
西暦で言うと１９８５年くらいの世界をイメージしてください。

ここに来た時点で、あなたはなんとなくガイド本文に書いてある状況を把握しています。
今はお昼です。夜が来て、次の日の朝が来るころには、現在の寝子島に戻ってしまいます。
そのことも、何故かなんとなく確信を持って把握しています。
ただ、そういうことを把握してないまま、という設定でもオーケーです。アクションにそう書いてください。

たぶんここで起きることが、現在の寝子島に影響します。
気をつけて、でもコメディなのであまり深く考えすぎずに、楽しく行動しましょう。

◆久保田一族の状況

久保田美和先生はこの３０年前の世界では、マイナス２歳です。
美和ちゃん先生にそっくりな“モテない遺伝子”を持っている「一美」というマヌケな男が父親で、
美和ちゃん先生にそっくりな美しい顔の「和代」が母親になるはずです。

今日のデートで成功して、交際がスタートするはずだったのが、ブラジャーのせいでご破算です。
どうにかしましょう。どうにかしないと、たぶん久保田美和が消滅します。
ユウは４組の集合写真を見て、やっべ～と言ってます。美和の顔が薄くなってきてるから。

和代は怒って、神社の方へ歩いていきました。

一美は気が動転して、ユウやその周辺にいた若者たち（あなたたち）に助けを求めることもあります。
求めに応じて手伝ってやる、ということでもいいですし、
求められなくても、うまいこと偶然を装いつつデートをサポートしてあげましょう。

ちなみに、久保田一族には関わらずに遊んでてもいいです。
美和ちゃん先生がどうなっても知りませんが、全員で取り組まなくてもどうにかなるでしょう。たぶん。

また、３０年前の寝子島は、旧市街以外はあまり発展していません。
なるべく旧市街が舞台となるようにアクションを書いてください。

では、３０年前の寝子島でブラジャーを手にお待ちしてます。