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フリイラノーマルとは思えない夜景の細緻な描きこみに感動……!これならSと同じお値段を払ってもよかったのに恐縮やら申し訳ないやら嬉しいやら。
主役は背景!というコンセプトを見事に汲んで頂いて嬉しいです。遠景のビルや観覧車が手前に配置されたネオンの賑やかさと呼応していて細部隅々まで見ごたえあります。
春野ゆきILさま、素晴らしいフリイラありがとうございました!
眠れない夜。
極彩色のシャツと無彩色のコートをはためかせつつ屋上のヘリに立ち、地平線の彼方に視線を投げる。
心電図のごとく明滅するネオン。
ドロップスを撒き敷いたような夜景のその彼方に、夜を照らす灯台に見立てられ観覧車の骨格が浮上する。
ライトアップされた観覧車。
バブリーでチープなイミテーションの夜。
実の所、彼はこの夜景が嫌いではない。
眠れない夜が訪れるつどこうして長い長い階段をのぼり屋上にでて独り占めしたいと思う程度には好んでいるし、無自覚の内に漠然と愛着を持っている。
煙草から一筋立ち上る紫煙が夜風に乗じてたなびき、ネオンの照り返しによって濃紺の明るみから漆黒へ、淡く何層にも濾されたグラデーションの空へと還っていく。
「はあ……」
だりー。
唇から洩れた吐息は韜晦を含んでいた。
けだるく呟き、細い指先に預けた煙草を弾いて捨てる。
くるくる回りながら闇へと落ちていく煙草からあっさりと視線を断ち切って身を翻す。
「まるで誘蛾灯だな」
灯台よりはその表現の方が似つかわしい。
廃墟から仰ぐ観覧車は、蜘蛛の巣の蜘蛛が焦がれ仰ぐ空よりなお遠い。