*つきのひかり
「私、昼よりも夜が好きだわ。」
彼女が呟き月を見上げる。
「太陽の光は私には少し強すぎるもの。
ずっと浴びていたら焼け死んじゃうわ。」
月は太陽光を反射して光る。
「月の光は太陽の光」といつか僕に語ったことを
すっかり忘れたふりをして。
「ねぇ、知っている?
月の光を浴びている間、人は生きることを
止めることができるのですって。
生きるのって疲れるし、休み時間だって必要よね。」
彼女はそう微笑んで、柔らかな頬を僕に寄せた。
「私達、ずっと一緒にいられるかしら。」
縫いぐるみの僕に彼女は問う。
大丈夫。何時迄も一緒にいられるさ。
君はこの純白の身が共に日々を重ねる毎に
少しずつ擦り切れ、薄汚れ
姿が変わり果てようと僕を傍におくのだろうから。
「大好きよ、ルクス。私の光。」
幼い青薔薇姫。僕も君が愛しいとも。
大人になりたくない君が子供のままでいられるように
いつまでもずっと傍にいよう。
(ときに、冴来。
君が夜や月の光や僕との時間を好むのは
生きることを止められるからではなく
こうして過ごしている間は本当に
ただ君自身の為だけに
生きていられるからだと僕は思うよ。)