宿題終わってない子、集まれー！｜リアクション

宿題終わってない子、集まれー！

●お疲れ様でした

『ぬいぐるみが、ふかふかしていてかわいいです。うちにもきてほしいなと思います』

「よし、書けたぁ！」
　曖浜瑠樹は鉛筆を置くと、締めくくった読書感想文を読み返して、にこり。
　そろそろ日暮れも近い。
「皆よく頑張ったなー、お疲れ様ぁ！」
　三上塁はワザとらしいくらい明るく言うと、ハイタッチを求めて、赤銅スフィアと樹弥・エヴァンズの前に掌を掲げたが、スフィアはもじもじと樹弥の背中に回る。
　いじける塁だったが、樹弥が「ま、健闘賞かな」と掌を打ち合わせてくれたので、今度はにやにやが止まらない。
　帰り道、すれ違う人から思いっきり距離を取られても、きっと気付かなかっただろう。

　皆が帰路に着く前に、鍋島奈々美と椎名あさひは
「さぁて、今日の思い出の締めに、皆で集合写真やで！」
　と、愛用のカメラでパチリ。
　加藤戦乙女は当然の如くセンターへ。
　若干名、メンチ切ってるのがいるのも、ご愛嬌だろう。

「撮った写真は、2学期になったら皆にもあげるねぇ」
　あさひも勉強会の間、シャッターチャンスを狙っていた一人。
　小さなフォトグラファーは、どんな写真を撮ったのだろうか？
　夏休みが終わっても、新学期学校に行く楽しみが増えそうだ。

「今日はありがとうなぁ……帰ったら、自由研究も頑張ろうかねぇ」
　陰ふみしながら、瑠樹も九夜山の緩やかな坂を下る。
「ありがとうございました！」
　夢月姫もペコリとお辞儀。

「ソフトさん今日はアリガトウ、スイカもゴチソウサマ」
　劉瑞麗はじめ、希望者にスイカを切り分けて持たせるそふとに、エルカディア・シュルツは部屋の片づけを申し出た。
「マジで？　助かるよ」
　そして約束通り納屋の古い農具を見せてもらって、エルカディアも満喫して帰ったのだった。

●エピローグ

（やれやれ、やっと終わったよ……）
　一人、黙々と工作をしていた宮越裕司は、細く息を吐き出す。
　空気に呑まれて、いつの間にか立派な招き猫を完成させていた。
　後は夏休み明けに提出すれば、宿題は全てクリアだ。

　しかし、裕司の顔色は冴えない。

　小さな頃は物作りが好きで、自分が何か作るたびに両親が喜んでくれて、とても嬉しかった。
　友達も皆、すごいと誉めてくれた。

　だが、前の転校先の先生は違っていた。
　少なくとも裕司は、「これでは他の子が惨めになる」と先生に叱られたと認識している。
　そんな空気を察してか、他の子からの風当たりも強くなり、結局は孤立してしまった。

　心配を掛けたくない一心で両親にも相談できず、友達との連絡も途絶えていた裕司は、一人ぼっちになっていた。
　以前は楽しかった物づくりも、趣味の人形制作にも、まるで手がつかなくなっていた。

（今日は久しぶりに、人形作りに没頭したな……）
　身近な材料で作ったにも関わらず、招き猫の出来栄えはなかなかのものである。
　満足のいく出来に、裕司はそっと微笑んだ。

（……でも）
　裕司は旧市街の小さな店の前で、足を止めた。
　どうしたって、思い出すのは前の学校の先生の心無い言葉と、クラスメイト達の敵意で。

　ガコンと音を立てて、招き猫はくず入れに落ちる。
　ゆっくり後ずさりして、背中を向けて駆け出す裕司の足音だけが、路地に木霊した。

　この時、裕司はまだ知らない。
　招き猫が漬物屋の主人・梅川照喜に拾われて、『うめ河』の看板猫になった事を――。

「皆が笑顔で、始業式を迎えられるといいですね」
　軽くなったクーラーボックスを手に、九夜山を振り仰いだ月守輝夜が、おっとりと呟いた。

　　　終

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：メシータ
ファンレターはマスターページから！

　皆様、お疲れ様でした、メシータです。
　小中学生のみという限定的なシナリオでしたが、多くのキャラクターさんにご参加いただき、またそのほとんどが初見のキャラクターさんだったので、新鮮な気持ちで執筆させて頂きました。

　可能な限り、キャラクター同士が絡めるようにしてみました。
　このシナリオを切欠に、皆さんの交流がいっそう楽しいものとなりましたら、幸いです。
　お友達が、たくさん出来るといいですね。

　「らっかみ！」の夏も、あと僅か。
　小中学生の皆さんが、先行するお兄さん・お姉さんに負けず、楽しい思い出をたくさん作れますように。

　それでは、当シナリオへのご参加まことにありがとうございました。

↑ページトップに戻る

宿題終わってない子、集まれー！

あとがき

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧