ウォルター先生と豪華客船クルージング！｜リアクション

ウォルター先生と豪華客船クルージング！

　船の甲板から見える夕陽が波立つ海にきらきらと反射している。
　恵御納夏朝が足を止めて見とれていると、
「恵御納、ぼーっとしてると危ないよ」
　横を見ると、ウォルター先生が笑っていた。
「綺麗だったからつい」
　夏朝は照れ笑いを浮かべ、ウォルター先生と中へと入った。
「わっ」
　船の中とは思えないほど豪奢な造りだった。天井のシャンデリアがきらきらと輝き、床もワックス塗りたてなのか、汚れ一つない。
そして、長テーブルには大皿に盛られた料理が並んでいた。
「先生、一緒に回ろうよ」
「そうだねぇ。じゃあ、はい、お皿」
「ありがとっ」
　夏朝とウォルター先生は近くの洋食コーナーへと足を向けた。
「あ、猫形のハンバーグ！　こっちはパスタ？　グラタンもある」
「恵御納、これ、なんだかわかる？」
　ウォルター先生が指を指したのは、マグカップに膨らんだパイ生地が被さっている。
「これって……」
「持っていこうか」
　夏朝は洋食、和食、中華のテーブルを一通り回り、ウォルター先生と一緒に席に着いた。
「デザートは後から取ってこようかな？」
「さ、これを、食べようか」
　差し出されたのはスープパイと呼ばれる料理だ。
「これ食べたことあるようなないような？」
「スプーンでこう、崩してみると」
　ウォルター先生に言われた通り、パイ生地をスプーンでつつく。
「あっ」
　マグカップの中には熱々のクリームスープが入っていた。
　パイを崩しながらスプーンですくって口へ運んでみる。
「うん、美味しい」
「それと、ほら」
「ん？」
　スープをかき混ぜると、猫形の人参が浮かんできた。
「これ、可愛いー！」
「実はこのビュッフェの料理には猫が隠れてるらしいよ。凝ってるよねぇ」
「へぇ、探してみようかな？」
　楽しく食事を終えた後は、再び甲板に出た。夕陽はもう少しで沈みそうだ。オレンジ色の光がかげってきている。
「それで、悩みごとがあるみたいだけど」
　食事の時にちらっとそのことを話したのだ。
　それは、自分の中にいるもう一人の自分、夏夜のことだ。
「友達がいるんだ」
　正確には友達と呼べるかわからないが、
「夏夜ちゃんて言うんだけど、その子の相談」
「夏夜ちゃん、か。高校生？」
　あえてそれには答えず、
「皆には殆ど内緒にしている、叶えるのがとても難しくて、けど絶対に叶えたい願いがあるんだって。そういう願いを持った時……先生なら、どうしますか？」
「……そうだなぁ。とにかくどうすれば叶うか調べるかな？　まぁ、諦めないでとは言えないけどね、僕にも経験があるから」
「諦め、かぁ」
　夏朝は小さくため息を吐いた。
「ん？　そろそろ観劇が始まるみたいだねぇ。どうする？」
「うん、行こう、先生」
　演劇部員としてはとても興味深い。
　これが終わればクルーズの旅は終了だ。最後までウォルター先生と楽しみたい。夏朝はそう思いながら中へと入った。

このページにイラストを設定する