ノノコ　踊る寝子島｜リアクション

ノノコ　踊る寝子島

◆あの子と一緒に

　昼休みの寝子島高校は授業を終えた生徒でごった返していた。廊下は購買や学食へ急ぐ生徒や教室を移動する生徒が行き交い、とても賑やかである。佐藤英二はその中をのんびりと歩いていた。すると、突然ナンとカレーの合いそうな陽気でマサラなミュージックが向こうから聞こえてくる。英二は吸い寄せられるようにそちらを見た。どこから現れたのか、女子の集団がわらわらと一箇所に集まって踊っている。その中心にいるのは、ののこだった。とても楽しそうに踊っている様を見て英二は目を白黒させたが、なんだか踊りたくなる衝動に駆られる。

「野々さんも楽しそうに踊ってるし……」

　理屈を抜きにと割り切って、英二はその踊りの輪に加わった。場のノリに乗りながら、英二はあれよあれよと輪の中心に据えられる。そして、なぜだろう。男子の集団もわらわらと英二の周囲に集まってきて踊り始めた。ののこの隣で踊りながら、英二は彼女との会話を試みる。しかし不思議なことに言おうとした言葉はラップ調になって口から出てきた。

「野々さん、何故なぜＨａｐｐｙＤａｎｃｉｎｇ？」

　ののこが答えるように焼きそばパンを手に入れた喜びを歌い上げる。

「Ｏｈ！　それまさしくＹａｋｉｓｏｂａｐａｎ！」

　英二は笑顔になり両手を上げた。

「Ｌｕｃｋｙ納得　ｂｕｔ　納豆食うのはご勘弁！」

　そしてキレッキレに踊り出す。

「ＤａｎｃｅＤａｎｃｅＤａｎｃｅでインドな気分」

　曲も終わりに近付いてくると、さすがに体力も尽きてくる。英二は息も絶え絶えになりながら、

「Ｄａｎｃｅで体力消耗　昼食メニューカレー所望」

　と叫び、動きを止めた。妙なテンションで興じたダンスではあったが、意中の相手であるののこと踊れて、なんだかんだ言ってＨａｐｐｙ＆Ｌｕｃｋｙな心持ちである。激しく踊ったせいか、なんだかお腹が空いてきた。音楽やダンスのせいだろうか、カレーの気分だった。英二はカレーを食べようと、学食へと向かった。

　寝子島を突如ナンとカレーの合いそうな雰囲気で包んだこの神魂は、一夜明けた途端治まったようだ。それから住民の気分がどれだけ高揚しようと、謎のダンス集団が現れることはなかった。凡その『ひと』は、突発的なイベントだったんだろうとこの神魂を処理し、フツウの日常へ戻っていった。

　一方その頃、英二は昨日のことを思い出して布団の中でのたうち回り、頭を抱えていた。ののこの前で予想以上にはっちゃけてしまった。悔いてももう後の祭りである。英二は神魂を恨んだ――。

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