『捕われの人形』-3-
足は妙に白く、生気が感じられない。
膝に継ぎ目が有った。
突然、最後の記憶が蘇る。
見慣れぬ骨董店。ステンドグラスのランプが照らす、薄暗い店内。
棚に並んだ様々な香水瓶。彫刻で飾られた丸テーブル。開かれた宝石箱。光で揺らめく宝石たち。
最後に見たのは、椅子に座った古い人形。
黒いナイトドレスを着た人形の、白い腕、球体関節。
そして瞳に埋め込まれた、濃いピンク色の宝石。
来島と同じ色の瞳に魅入られて、記憶はそこで途切れていた。
そして目の前に有るのは、球体関節の足。
混乱と妙な納得感。
陶器製の球体関節人形と成り果てたらしい自身の状況に、来島アカリは恐怖を感じ始めていた。
『捕われの人形』-2-
それは温度。石の床の冷たさ。
自身と石床に、差が生じたからこその感覚。
徐々に増しゆく冷たさに、来島は確信する。自身を取り戻しつつある事を。
相変わらずの白い世界。
イメージする。冷たい石の床、そこに座る自分。
強く、強く思い描くと、白い世界にボンヤリと輪郭が浮かんだ。
見たい、見たい。強く願う。
曖昧だった輪郭は徐々に確かな線を描き、色が滲み出る。
最初に見えたのは、自身の前髪。深い青の髪。
次に見えたのは、木枠の窓。その外の景色。
木々が雪に覆われる、冬の森の景色。
窓から意識を近付ける。
窓、淡い水色の壁、磨かれた灰色の大理石の床、紺色の革靴、フリルのついた白い靴下、そして、自身の足。
『捕われの人形』-1-
見たい。
そう願ったのは、何も見えていない事に気付いたから。
来島アカリが意識を取り戻した時、世界の全ては白に支配されていた。
まずは状況を……と、目を開こうとする。が、どうやら瞼は開いている。
ならば、と顔を触ろうとするが、動かない。
集中して意識を巡らせれば、何かにもたれて座っている自分の姿勢は把握出来た。
ただ、動かない。腕も、足も、首も、指も。
開いてる筈の瞳は、それなのに白しか映さず、何も確かめられない。
徐々に焦りが芽生えて来た。
停止していた思考は少しづつ、本来の機能を取り戻しつつある。
ここはどこなのか? 自分はどうしてしまったのか?
様々な疑問が脳裏を巡る。
家族、友人の事を想い、寝子島の風景を思い描いた時、指が固い感触を伝えた。
目覚めてから、初めて得た外部の情報。
来島は指先に意識を集中する。
固い感触。自分の姿勢から判断すれば、これは恐らく床の感触。
ざらつきは無く、木のような一定方向の繊維も感じない。
恐らく、磨かれた大理石の床。
集中する内に、指が別の感触を伝えて来る。
「俺は、どうして独りぼっちでここにいるんだろう……
何も思い出せない、何の感情も湧かない……
でも……なんだか少し、冷たい……な」
ロベルト先輩>
「……貴方は、誰?
もしかして……俺の、ご主人様……?」
……なんて言ってみたり?演劇用の衣装、です
褒めてくれて、ありがとう……ございます
(PL:ゴスロリを身に纏った球体関節人形…というコンセプトで発注させて頂きました。
とても綺麗に描いて頂きありがとうございます!
人形めいていて、それでどこか哀しげな表情がイメージ通りでとても素敵です。
人形部分の足やフリフリのゴスロリ衣装、暗めでまとまった背景もイメージ以上でとても気に入っています。
この度は本当にありがとうございました。)
お、おお……!!なんて……なんて美しいんだ!
物憂げな表情に、脚は……そういう柄のタイツなのかい?人形を思わせる。素晴らしい……
それに、その服も似合ってる!すごい……いいね!!