『黒い羽根』-後-
弦の余韻が風に溶け、音が途切れたのに気付いたアナタは、そっと目を開ける。
樹上に女の姿は無く、黒い羽根がヒラヒラと、舞ってアナタの手に収まった。
夕陽が最後の光を断つと、辺りは闇に包まれる。
---・・・。
ぼんやり羽根を眺めていたが、ハタと気づいて焦る。
早く宿場に向かわねば。
黒い羽根を袖にしまうと、アナタは再び道を急いだ。
陽の沈んだ山影目指して、一羽のカラスが飛んでいく。
アイツも焦っているのだろうか?
アナタは何故だか、可笑しくなって、袖にしまった羽根を撫でた。
『黒い羽根』-前-
空が紅く焼ける頃、街道を急ぐ人影一つ。
宿場まで辿り着けるかと不安に思い始めた時、頭上から声が聞こえた。
「そこのアナタ」
驚き周囲を見渡せど、ここに居るのは自分一人。
「そう、そこのアナタですよ」
声は上から降って来たのだ。
樹上から自分を指差す女は、三味線を抱えてニコリと笑う。
「一曲、如何です?」
急いでいるのに言い返せない。
黒地に金模様が珍しい綺麗な着物に見惚れたのか、
それとも黒髪の隙間から覗く妖しい瞳に縫いとめられたのか。
何故かアナタは首を縦に振る。
すると女は嬉しそうに姿勢を正した。
「良き日、良き時、良き場所で、すれ違うのも何かの縁
訳有って、高い所で失礼しますが、なぁに損はさせませぬ
これよりお届けしますのは、出来たばかりの調べに候
黒き翼で闇から逃れる、独り女の物語」
掻き鳴らされた弦は力強く、時に儚く調べを奏でる。
樹々のささめきに溶け合うような、女の声が心地よい。
いつの間にかアナタは目を閉じ、時が立つのを忘れていた。
さて、さて。
――――それでは一曲、如何です?
〇PLより〇
三味線!三味線!!わー!わー!格好良い……!
背中の翼の雰囲気が素敵で、着物の広がりも鳥のようで、
金と黒からのこの和の雰囲気がとても綺麗です。
上目使いの表情や、三味線を抱きかかえる手と腕が艶やかでとても素敵です……!
丸投げ企画を見る度に楽しそうだなと思っておりまして、お願い出来て幸せですっ
アミジョウ様、素敵で格好良いイラストをありがとうございます!
大切にさせて頂きます!