『アクア・アルタ』-2-
アクア・アルタ。
遠く水の都で起こると言われる異常潮位。
普通では起こり得ぬ現象が、今日、寝子島で起きていた。
潮位は現在の、くるぶし辺りまで上がったのが最大で、しばらくすれば引くらしい。
寝子島の住人達は戸惑いながらも受け入れて、それぞれ楽しむ事に決めたようだ。
瑠奈はいつも憂鬱な表情で取り出すレインブーツを、今日は笑顔で用意した。
軽い水音を立てて歩き、水面に映った空を揺らす。
飛べぬ幅に困る子猫を、向こう岸の母猫に届ける。
馴染みのカフェはテーブルを運び出し、水上カフェと洒落込むようだ。
自転車の小学生たちは、飛沫をあげて競走中。
誰が飛ばしたのか、空には七色の風船が浮かんでいた。
いつもの道、いつもの人達が、フツウのくれた非日常を、笑顔で過ごしている。
沢山の元気を貰った瑠奈も、笑顔でアナタに振り返った。
「ねえ、どこに行こっか?」
『アクア・アルタ』-1-
空が青い。
心地良い日差しと澄んだ空気を、体全体で受け止める。
「気持ちいいね」
淡い茶色の髪を揺らし、小柄な少女、夢宮瑠奈はいつもの道を歩き出す。
寝子島の海沿いを遠く、観覧車まで続く、歩き慣れた道。
見慣れた景色は今日、一変していた。
どこまでも続く水面。
映し出された空の青。
不自然に突き出た標識や街灯が、かろうじてソコが道である事を示している。
足元を小魚の群れが泳ぎ、ベンチ上へ避難した猫がそれを狙う。
今日はちょっと違う寝子島だよぅっ!
こんな世界も、楽しいよねっ!
PL:
きっと神魂の影響ならアクア・アルタも起こるのですよ。
って言う気分でお願いしたところ、とっても素敵な一枚。
青く澄んだ世界って、いいですよね。
ありがとうございました!