この世に生を受け、今日に至るまで地続きに育った僕と、その僕が“少し”この世界からずれてしまった分を補うためにつけることにした仮面の僕が居た。
仮面の名は『君の影となる草』の名を。
そして『琳』の音を核として抱き続けた僕は縁(ゆかり)と同じ色を冠した花の名を。
ある時を境に長く眠るようになった僕だけれど、木枯らしに攫われ泣く木の葉の声と、深い紅に染まり行く山並みが見ゆる頃には何故だか目が覚める。
「人の子の時は早いものだね。昨日見たと思った君は明日には貴方になっている。
僕は何も変わりはしないさ。変わらず今日も愛しているよ」
京の都の秋とは違う景色でも、夜風の香りは同じもの。
ならば冬将軍の足音が聞こえて来るまで、或いは春の子が慌てて駆けてくるまで。
夢から目覚めているのも悪くない。
「…ああ、僕が違うと知るのなら、君は紫蘭と呼ぶと良い」
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もしやヘアピンは金木犀の花でしょうか?嬉しいサプライズです。かわいい!
イメチェン後のイラスト、是非京谷絵師にお願いしてみたかったのです。
着物のカラーリングもイメージ通り。背景は実にこの子らしい。
ご縁頂けて嬉しかったです。大切にさせて頂きます。ありがとうございました!