『聖域』-2-
少年は目を閉じ、眼鏡を掛け直す。
「やっぱり、やめよう」
邪まな本能に殉じて、自らの聖域を犯してはならない。
例えその先に興味をそそられる、未知の性域が広がっていようと。
弱い自分を、否定する。
邪念を振り払う様に首を振り、少年は立ち上がった。
実家の方角に向き直り、一歩踏み出す。
「やっぱり、一ページだけで--っあ!」
閃光と共に薄い本は、一瞬で燃え尽きた。
『聖域』-1-
ソレに手を触れた瞬間、少年の手に電撃が走った。
比喩では無い。
少年の手から放たれた電撃は、彼の心を捉えた書物の表紙を一部焼き、慌てて引いた手と共におさまった。
「ああっ、SGちゃんがっ」
再び伸ばした手を無理矢理止める。
『ギター娘っ! SG水着写真集 ~貴方の指で爪弾いて~』
ズレた眼鏡の奥の瞳は、一冊の薄い本を捉えて離さない。
実家近くの竹林で偶然見つけた本。
写真集と銘打ってはいるが、最近流行りの擬人化されたギター。ギター娘っ! の二次創作本である。
己の愛するギターを模したエロスに、マニア心を掻き立てられる。
一方では愛するが故の保守的な感情。ギターはギターであるべきとの拘り。
「指で……って、ピック使うよ。普通は」
否定しながらも惹かれ、己を誤魔化しピックアップしようとする。
そんな自分が嫌で嫌で、触れた途端にろっこんが発動してしまったのだ。
Σ 静電気・・・じゃない?
(PL)
眼鏡の微妙なズレ具合に感謝です!
絵師さんありがとうございましたー