深い森に人知れず存在するこの古城。
住まうのは俺、そしてこの美しい伴侶。
俺の首に手をかけ覗き込む双瞳はかつては人間だった愚かな女。
嗚呼、その瞳に吸い込まれてしまう俺も愚かな男だ。
艶やかな首筋にそっと牙を突き立てる。
それはまるで、毒のような甘さ。
毒水が俺の喉を伝う甘美な刺激に酔いしれる。
首筋にチクリと痛みが走れば俺の血を啜る可愛いの吐息。
なんと官能的な夜だろうか。
されど愚者共の輪舞曲を聞くは赤々しく咲く野薔薇のみ。
夜は果てなく永い……。
(うわぁぁぁ。なんじゃあこれエロい…!ひふみさんの色っぽさに震えが止まりません。
一也とてもやらしー。挙句ガイドにまで登場させていただきました。http://rakkami.com/scenario/guide/946
お付き合いいただいた神無月PL様、そして美しいイラストを描いてくださったko_z絵師様。本当にありがとうございました!)
丘の上に建つ古城には長命種(メトセラ)の領主が棲まう。
歴代領主とその細君の肖像画を飾った吹き抜けの大広間にて、今宵もロンドを踊るのは、金髪を一房朱で染めた孤高の貴公子と赤薔薇のドレスを妖艶に着こなす花嫁。
クリスタルの涙滴を散りばめた豪奢なシャンデリアの下、流るる黒髪に鳩の血色(ピジョン・ブラッド)の瞳、なめらかな象牙の肌の少女が高いヒールで華麗に回る。
手練れの職人に研磨された最高級のルビーにも喩えられる瞳が恍惚と見つめるのは、彼女の生涯ただ一人の伴侶。
「共に地獄に堕ちる覚悟はあるか」
「貴方となら天国にだって堕ちていける」
サファイアの瞳を眇め酷薄に含み笑う貴公子に、ふっくらした唇から慎ましく尖った牙を覗かせそう答え、接吻をねだるように首の後ろに手を回す。
彼女は吸血鬼の花嫁。
処女の血を捧げ吸血鬼と契った事で、かよわき生贄から永遠を生きる伴侶と見初められた、したたかな毒婦(ヴァンプ)。
「ねえ、キスして頂戴」
熱っぽく潤んだ目と吐息のような囁き声に煽られ、貴公子が生唾を飲む。
アップに纏め上げた黒髪を一撫で、露わになった首筋へ牙を立てる。
吸血鬼と毒婦、ヴァンプな夫婦の夜ははてなく永い……