「イェーーイッ!!」
思い切りハイタッチ。
パンッ、と乾いた音が気持ちよく響く。
オカシイ。
陽太は赤くなった手を見て思った。
勿論、顔には出さない。
友人との何気ない会話、盛り上がってハイタッチ。
良くある日常。
今となっては貴重な日常である。
昼休みに連れだって向かった、購買での押し合いを制した。
屋上で戦利品を広げ、ハイタッチ。
そう、これが最初の?
焼きそばパンを手に入れた友人、楢木春彦はラップを剥がすのに手間取って、陽太の怪訝な顔には気付かない。
周りを見渡しても、屋上には二人きり。
空はよく晴れ、風は深まる秋の気配を有していた。
陽太は未だ苦戦している友人を見て、軽く噴き出し、考えるのをやめた。
「春彦君、シールを先に剥がさなきゃ駄目だよぅ」
「あっ、そうかっ!」
春彦は照れ臭そうにして、ようやくラップを剥がす事に成功した。
「おお? ラッキーー!」
春彦が大げさに喜ぶ。
見れば友人の焼きそばパンから、小さなウィンナーが顔を出している。
「やったね春彦君、ウィンナー当たりだよぅ」
陽太は手を上げ、友人を祝福する。
春彦も手を上げ、それに応えた。
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