(珍しく市子さんのほうからこんなとこに連れ出してくれちゃって、2万5千ドルがどーのこーの。
うん、私バニラは好き。イチゴも好きよ。ビターなチョコだって大好き。
いちばん好きなのを選ぶとしたら……
……分かってないわよね。
分かってるのかもしれないけど、やっぱりこの人はよく分かってないって、そう思う。
この世界でいちばん苦くて。
酸っぱくて。
それでいていちばん甘いものは。)
―――――。
(ちょんちょん、と、自分の口元を指で示して。
私はゆっくり口を動かす。
た・べ・さ・せ・て?
ほ・ら♪)
ウソかホントか知らねーが、前にネットで見かけたハナシ。
この世でイチバン豪華なサンデー、お値段2万5千ドル。
だけどコイツはもっと高い。あたしが食わしてやんだから。
ほら。ドレからいく?好きなの選べ…って。なんだよソレ。
………………………。イヤイヤ待て。ちょっと待って。まさか、その…。