左目に接吻するクリスマスローズ
醜い傷痕を隠して咲く聖なる花
このクリスマスローズは盲いた心の化身
わたしの眼窩に根付き、涙の養分を吸い上げて美しく咲く
降り積もる哀しみを糧に花開く 清浄な白さに魅入られる
喪われた世界の半分がどんな色をしていたか
わたしはもう忘れてしまった
涙が尽きたらこの花も枯れてしまうのだろうか
右目から滴り落ちた涙が大地に染みる
涙が落ちた大地に芽が萌え出でて花が咲く
右目から零れた涙は極彩色の残像を封じた種 生命の源
その種が無数に大地に落ちて次々と花が芽吹く
さしずめオフィリアの花葬の如く
わたしを中心に広がる花畑
それは嘗て視た色の名残り
視覚を奪われてもなお心に残るあざやかな色たち
世界に色が充ち溢れ
大地は祝福に満たされて
そしてわたしは枯れていく
誰か私を視つけて。
花に埋もれて朽ちゆくわたしを視つけて。
涙が枯れ尽くしたら残る右目も萎れてしまうのだろうか
誰かわたしにキスをして
左目から蜜を啜って
その蜜はきっと涙の味がする
右目の希望と左目の絶望が溶け合った甘美な味がする
ひそやかに右目を瞑り闇へ還る
冷たく透明な静寂の棺に籠もる
わたしの中に溢れる蜜
それはきっと、とても甘い……
幼き日に失くしてしまった景色の先は、色を無くしてしまった
左に映るのは、ただただ真っ白な世界
疵を塞ぐように、クリスマスローズは艶美に咲く
この花は、きっと私自身の心の表れ
求めて、和らげて、忘れないでって、慰めてって
寂しさが深く埋め尽くしていく
――誰か、わたしを視付けて。
【PL:イメージ通りのイラストを有難うございます。
美しくも儚く、それでいてちょっとした艶やかさも秘めたような素敵な一枚でした。
彼女の誕生花であるクリスマスローズもいい感じに左目を隠すように添えられていて存在感があります。
1号様、今回は彼女の心象を表すようなイラストを有難うございました!
またご縁がありましたらよろしくお願いいたします】