『対決』
落ちるっ!
誰もがそう思った。
小さな桟橋から吹き飛ぶ少年。
しかし細身の少年は、宙に浮いた状態でなんとか体を捻ると、湖面に手を伸ばす。
水面に着いた指の先から、急速に湖が凍って行く。
少年は受け身を取って氷上に立ち、上着に着いた、霜を払った。
「ばあちゃんが言ってた。女子を泣かす奴は許しちゃダメだって」
桟橋上で驚愕の表情を浮かべる暴漢。
その手に捕われた少女は、恐怖と安堵で震える頬を、溢れる涙で濡らしていた。
その顔を見て少年、双葉由貴は奥歯を強く、噛み締める。
「助けるからっ」
多くは語らず、青い瞳を二度、瞬かせる。
氷の飛沫が、舞い上がった。
暴漢目掛けて一直線に駆け出す。
少年の反撃が始まった。