古代の神殿に見立てた荘厳な野外音楽堂にたたずむ一人の青年と少年
工具箱を持参し、中央のピアノの修理をしていた少年がおもむろに声を上げる。
「あ」
「どうした」
「こんなの見つけましたよぉ、遥さん」
手にした紙片をひらつかせつつやってきた少年を、苔むした石段に腰掛け、リラックスした風体で足を投げ出した男が胡乱げに振り返る。
「絵葉書か」
「ピアノの蓋の上においてありましたん。誰かの忘れ物ですかねぃ」
「こんな廃墟に?」
人懐こく笑う少年に手渡された絵葉書を眉をひそめてためつすがめつ、しかしすぐ無関心な表情に戻り、それを返したあとで傍らに置いた缶コーヒーのプルトップを引く。
「宛名がないな。貰っておくといい」
「いいんですかねぃ。おっと」
男が無造作に投げた缶コーヒーを逆の手で咄嗟に受け取る。
少し考える素振りをしたあと、男に促された事も手伝って一つ頷く
「……それじゃあお言葉に甘えて、っと。どんな人がおいていったんですかねぃ」
「変人だろ」
「オレ達みたいな、ですか」
「それ以上かもな」
熱のない男の言葉にも気分を害すことなく、好奇心に輝く目で頭上に翳した絵葉書を見つめ少年は呟く。
「逢ってみたいなあ」
その夢は、もうすぐ叶う
PL
凄い!荘厳!ギリシャの神殿風に、なんて注文をつけてしまいましたが、想像より遙かに神々しく威風堂々とした仕上がりになって感激です。
朽ちた柱に絡む蔦や表面を覆いつつある苔の表現など、廃墟特有の美しさがこれでもかと詰まっていて見飽きません。
そしてなんといっても陽太さんの鎖骨!遙の肩に気さくに手をかけたポーズと相変わらず食えなさそうな笑みがお気に入りです。遙も無造作に足を投げ出し、いつもよりリラックスした感じですね。
さりげない距離感から当人が自覚している以上の親密さが伝わってくるようでにやにやしてしまいました。
京谷絵師さま、素晴らしいフリイラありがとうございます!
PL:
見た瞬間、凄すぎて固まりました。
野外音楽堂の朽ちかけた感じとピアノの存在感、蓄音器と黒猫のレコード、
絵葉書を見せて話しかけている様子を何度も見てしまう程素敵です。
さりげなくある道具一式も描いて頂けてとても嬉しかったです。
絵師様、とても素敵なイラストをありがとうございました。
遙さんのPL、ご一緒して下さってありがとうございます。
コーヒー、ごちそうさまでした!