見渡す限り一面の麗らかな花畑。
ネミッサの視線の先には小春日和を持て余し、所在なげに胡坐をかく男の人。
その背後にそうっと忍び寄り、後ろ手に隠し持っていたモノをもったいつけて頭上にさしのべ……
「えい」
花冠を被せる。
「ふふ、とってもお似合いよ、パパ」
ネミッサは知ってる。
この人は素直じゃない、けれど本当は優しい人。
クールでぶっきらぼうな物言いにピュアな「真心」をくるんだ人。
小さな花を編み込んだ花冠をちょこんと頭にのっけて、むすっと照れた顔して黙りこくるその姿が愛しくて。
パパの首に緩く腕を回し、甘えるように凭れかかる。
「ネミッサからの贈り物、大事にしてね」
目を閉じてじっとしているだけでいい。ネミッサはそう言った。
何をするつもりだろうか…漠然と思考を巡らせた後、俺は応じて…目を閉じた。
少しした後くすぐったい感触を感じる。頭に何かを乗せられたらしい…目を開く。
「……花冠?」
乗せられたそれに指で触れる。崩れない辺り手が込んでいるようだ。
それにしても、花冠か。
「俺にゃ似つかわしくねぇな…。」
感謝よりも照れ臭さが勝り、ついそんな言葉を口走ってしまったが
まぁ…正直な所、悪い気はしていない。
その証拠に、俺はこの「真心」を退けようとはしなかった。