わたし、そんなわるい子じゃないもん……。
分厚いコンクリ壁に無数の靴音が反響する。
錆びた鉄格子が並ぶ監獄の中をひたすらに逃げながら、薄汚れた囚人服を着た幼女が泣き叫ぶ。
「なんで!?わたしは正しいことしたのにっ、わるいことしたならおしおきされるのもしょうがないってあやまったのに!」
潤んだ瞳に大粒の涙が滲む。
恐怖と焦燥に駆り立てられ手足が震える。
警棒で殴打された痛みで全身が燃えるように火照って疼く。激痛を堪えひた走る少女のうなじを風切る唸りを上げて固い警棒が掠め去る、「ひっ」と噛み締めた歯の間から吐息を洩らし首を竦める幼女。
突起に躓き体が前掲、そのままずしゃりと突っ伏す。
「きゃあっ!」
コンクリートが顔面を削る。
「うう……ひぐっ」
しゃくりあげながら弱弱しく上体を起こした幼女を不吉な影が包囲する。
帽子を目深に被り、表情を隠した看守たちに無言で詰め寄られ、幼女はじりじりとあとじさる。
「あ……あ……」
胸の前で両手を組み、必死の表情で哀願する。
「ごめんなさ……ゆるして……いい子になりますっ!もうわるいことしません、ごはんものこさず食べます、おかあさんのお手伝いもします、だから……」
幼女の眉間に警棒が振り翳されたー……
ぐしゃり。
うみちゃん、ミコがいるから、だいじょーぶ、だよ!!
おや、小島さんの所の海美ちゃん・・・こんな夜更けにどうした?