体長は目算でざっと500m級。
その威容は人類圏と未開の海とを隔てる境界の壁を遙かに超えている。
ずしん、大気を震わせ地響きが轟く。濛々と舞い上がる粉塵の中かで異形の影が揺らめく。
「なんだ、あれは」
愕然と目を剥く大衆にまじり、幼馴染の二人の少年も微動せず立ち竦み、不吉な地響きをたて迫りくる巨影を見上げている。
「なんやねん、アレは!?」
短髪を立たせた三白眼の少年がヒステリックに叫び、その傍らの賢そうな眼鏡の少年が生唾を嚥下する。
天を突くような威容を帯びたその影は、人類を守護する巨大な壁をただの前進によって脆くも突き崩し、今まさに彼等の領土に第一歩を踏み入れようとしている。
悲鳴を上げて逃げ惑う群衆、赤ん坊を抱いた母親や鍋釜を担いだ商人や馬車を駆る貴族が我先にと逃げ出す阿鼻叫喚の地獄絵図の中、落雷の如く戦慄に貫かれた少年ふたりを、巨大なサンマがギロリと見下ろす。
死んだ魚のように無表情な目が己の「餌食」に照準を絞る。
どちらが捕食する側される側かはもはや明白……。
「魚(ぎょじん)人だ」
その日、人類は思い出した。
生簀に囚われた屈辱を。
養殖されている恥辱を。
進撃の魚人の恐怖をー……
すべての腐人を駆逐してやる!!!!!!
どうかしてた……頼む、今のは忘れてくれ……
きっと神魂のせい(以下略