『七月の』
笑う。
少女が笑う。
萩の蕾が綻ぶ様に。
赤い短冊を大事に両手で持ち、嬉しそうに、頬を赤らめる。
短冊には、もうすぐ逢える想い人への、ささやかな願いが書かれていた。
少女は笹の元に小走りで寄って、短冊を胸に抱きしめ、口の中で何事か唱える。
ありったけの想いを込め終わると、笹の葉を掻き分けて、奥の方へと結びつけた。
緊張で吸いすぎた息を、胸を押さえてゆっくり吐き出す。
笹に背を向け、駆け出す少女。
美しき黒髪に揺れるのは、赤いリボンと萩の花。
愛しい人に貰ったそれを、そっと触って確認すると、少女の口元が、再び綻んだ。
星が二人を引き寄せたのが運命ならば、その先へ進むのに必要なのは本人の勇気。
赤い短冊に込めた願いの分だけ、胸に勇気を蓄えて、少女は邁進するのだった。
笹の奥に揺れる短冊。
書かれているのは余りにも奥ゆかしい、小さな願い。
「あの人と、手を繋いで歩けますように」
PL:
おしとやかな雰囲気が新鮮です。着物や髪飾りも可愛いです。
シナリオ「ご先祖様、奮闘す。」で小萩のご先祖様として考えたものの諸事情で使わなかった明治の女学生風・小萩が期せずして叶いました。
ありがとうございました。