吸い込まれそうな夏空を一直線に飛行機雲が過ぎっていく。
コンクリ打ち放しの研究棟の屋上から仰ぐ空は高く、瀟洒なビルが建ち並ぶシーサイドタウンの眺望が眼下に広がっている。
白く繊細な手で金網を掴み、視線を遠くへ投げる。
視線の先にはシーサイドアウトレットの大観覧車、玩具のようにカラフルなゴンドラが緩慢な円軌道を描いている。
最後に乗ったのはいつだっけ。
子供の頃に家族で遊びに行って以来か。
あの時はまだ妹との間に溝ができてなかった。
今だってわだかまりを抱えているのは自分だけだとわかっているけれど。
だからだろうか、観覧車を見ると郷愁とも自責ともつかぬ一抹の胸の痛みが走るのは。
喪われた童心は戻らない。
一種憧憬じみた気持ちに駆り立てられ金網に掛けた手に力をこめる。
複雑な面持ちで立ち尽くす俺をよそに観覧車はのんびりと回っている。
もし再び観覧車に乗る事があるとしたら、その時俺の隣には誰がいるのかな。
その人は俺の罪を赦してくれるだろうか。
隣で笑っていてくれるだろうか。
虚空の揺り籠は空中の密室、ふたり膝を突き合わせる懺悔室。
言葉にしなくても通い合う気持ちがあるとしたら、その時こそ…
「僕」は、自分を赦せる気がする。
晴れた日に、高い所から空を眺めてると、何だか落ち着くんだよな…。
風も気持ちいいし、今日は晴れてて良かった。
(PL:アイコンに続き、ポトレでもお世話になりました。ありがとうございました!)