【1】
〜某月某日 校内のどこか〜
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おっ……と、ああすみませんね、拾っていただいて。
……おや?この自販機ボタンが反応しませんね?
全く、せっかく散らばしてしまった小銭を拾っていただいたというのに、肝心の自販機が壊れているんじゃどうしようもありませんね?
今日は「ついてない日」ですね。
ん?……写真?ああ、私の財布に入っていた写真ですか?
これは私の「ついてない日」の元凶になった人達の写真ですよ。
あなたは「ついてない日」のことって覚えています?
自分のやることなすことが全て裏目に出るような、どうにも巡り合わせの悪い日のことですよ。
……大して覚えてない?それは良くないですね!こうやって私みたいにちゃんと思い出として残しておくといいですよ。
過去の振り返り無くして成長はありませんからね。
【2】
例えば、そうですね……この写真、このドゴール帽を被った男の写真。
どうにもこの男が絡むと私の過ごす日が「ついてない日」になることが多いようでしてね?
え?いや、この男自身が特別なパーソナリティを持っているわけではありませんよ。
年齢相応の青臭い正義感を抱いた、少しばかり視野が狭かった、それなりに知恵の回る男というだけです。
直接的な接点すら無かった。
しかし不思議なことに……この男が関わると私の目論見がうまくいかないんですよ。
まるであの男を動かす「運命」が私のそれと相性が悪いとでも言うようにね。
いや、いや、写真を見返して自戒しているだけではありませんよ。
自身にとっての障害は、行動に起こして取り除かなければ。
それがうまくいったら……ほら、こっちの写真みたいに「マーク」をつけるんですよ。
このマークがついた写真は……ああ思い出した、私を補導したパトロール中の警察官だ!
少しばかり童心に返って水鉄砲で遊んでいただけだというのに補導だなんて、酷い話ですよまったく!
【3】
どういう意味かって?
教えてあげてもいいですが……それを知ったら、今日があなたにとっての「ついてない日」になるかもしれませんよ?ははは!
じゃあヒントだけあげましょう。
ヒント1、マークをつけているからといって、直接この写真の人物に接触したとは限りません。
ヒント2、このマークをつけている赤黒い色味は市販の染料によるものではありません。
ヒント3、この警察官には一人娘がいました。天使のように可愛らしくこの警察官は目に入れても痛くないような可愛がりようでした。
もういいって?ああそうですか。
そうそう、話を戻しますが、もし今後このドゴール帽の男を見かけることがあったら私、2年4組のエレノアに教えて欲しいんですよ。
もし秘密にされてしまった場合は……その「ついてない日」の元凶としてあなたの写真を加えることになるかもしれませんね?ははは!
じゃあもし見かけたら教えてくださいよ。
この、釘打ち機を持って、ドゴール帽を被った、犬ともに写っている男のことを。
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犬飼未央(「黒い指先シリーズ」より)