毎朝の登校中、公園の前を横切る。
ある日ふと、公園のベンチに人がいるのを見つけた。
黒髪で、スーツ姿。
長めの前髪を持つその男性。
彼は何をしているのだろう、と思うも別段気にせず私は学校へと急いだ。
しかし、次の日。
また、同じ場所に男は居た。
昨日と同じように、ベンチで足を組み、座っている。
不思議に思うも、だからと言って話しかける程に気にかかるわけでもない。
更に次の日。
やはり、そこに男性は居た。
流石にきっといるのだろうな、と思い始めていたので驚きはなくなった。
相変わらず彼の存在を確認し、そのまま学校へと向かおうとした時。
その男性は、こちらへと首を向けた。
口の端をクイと上げて、こちらに妖しい笑みを浮かべたように見える。
明日も、彼はいるのだろうか。
明日も、こちらに眼差しを送るのだろうか。
いつか、彼と言葉を交わす日は来るのだろうか。
その眼差しに捕らわれたかのように、私の頭は彼の姿でいっぱいになった。
次の日。
同じように、いつもの公園に辿り着く。
だけれど、男性の姿はなかった。
いつも男性が座っていたベンチに近づく。
男性の座っていた場所には、真っ白な羽が落ちていた。
私はそれをそっと拾い上げ、学校へと急いだ。